【序章】運動神経の良い子どもを育てるには

PHYSICALiz 代表 高政知也です。

 

私は大学院時代は児童の運動能力の研究をメインとしておりました。

大学院修了後に自身でパーソナルジムを開設し、現在は子どもの運動教育やアスリートのボディメイクなどを行なっています。

 

そして今回は、多くのお客様から質問される

【ゴールデンエイジ理論】

について、ざっくりな説明と理論の危険性について簡単に説明しようと思います。

 

まず、

【ゴールデンエイジ理論】

とは、日本サッカー協会(JFA)が提唱しているジュニア期のトレーニング理論であり、他のスポーツ分野でも同様の考え方が取り入れられているという話をよく耳にします。

【ゴールデンエイジ理論】は

 

・プレゴールデンエイジ(5歳~8歳頃)

・ゴールデンエイジ(9歳~12歳頃)

・ポストゴールデンエイジ(13歳~16歳頃)

 

といった時期で分けられており、

今回は一般的にスポーツへの移行期とされる

・ゴールデンエイジ(9歳~12歳頃)

についてちょっと掘り下げます。

ゴールデンエイジについて調べてみるとインターネット上でも

 

【ゴールデンエイジ(9歳~12歳頃)は、神経系の発達が100%に達するので、なんでも即座に短時間で習得できます!】

 

【センスが磨かれ、プロのような技術を身につけられる年代です!】

 

ってな感じでゴールデンエイジの説明が多く掲載されていました。。

 

筆者からすると、センスが磨かれる!なんて断言するような記事を書いている指導者が一番ナンセンスだと思います。

私はゴールデンエイジ理論肯定派なので、全てを批判したい訳ではありません。

正しい知識を身に付けましょう。の啓発です。あしからず。

 

話に戻ると、

そんな偏った情報が出回っていたので、

まずゴールデンエイジ理論を支える。

【スキャモンの発達曲線】

【即座の習得】

【脳の可塑性】

 

まずは【スキャモンの発達曲線】から

(やさしい生理学、改定第5版、p158)

(人体の構造と機能、第2版、p366)

「スキャモンの発達曲線」で有名なスキャモン(Scammon,1883-1952)は、米国の人類学者で「The measurement of man」(JA Harris, CM Jackson, DG Patterson, & RE Scammon、University of Minnesota Press, 1930)の中に掲載される「The measurement of the body in childhood(pp171-215)」でこの発達曲線の説明をしています。

情報も古く、マイナーな理論っぽいですが、私が学部生時代には大学の授業でも触れられていた気がします。

 

発達曲線の説明としては

「子供の発育・発達については“スキャモンの発育曲線”(図1)がよく知られています。成長発育を20歳のレベルを100%として考え、各体組織の発育の特徴を

1)一般型

2)神経系型

3)リンパ系型

4)生殖器系型

の4つのパターンに分けています。一般型には骨格筋や心筋など一般的な臓器がはいります。幼児期に発育したあと学童期には発育は緩やかになります。思春期以降に再び発育のスパートがみられ大人のレベルに達します。脳や末梢神経系の発育がこのパターンになります。リンパ系型は扁桃、リンパ節などのリンパ組織(免疫を担当する)の発達です。学童期にかけて成長し、大人のレベルを超えますが、思春期すぎから大人のレベルに戻ります。学童期に扁桃肥大が多いのもこのためです。男性ホルモンや女性ホルモンなどの性ホルモンの分泌も多くなります。」

成長期のスポーツ指導、加藤義弘(岐阜大学医学部))

がわかりやすいので引用させていただきました。

 

Scammonのデータでは縦軸の単位がわかりませんが、「やさしい生理学」では容量、他の文献では重量とされています。Timirasのデータでは、重量のような記述がありました。

 

このデータから読み取れることとして

・20歳を100%とした場合、一般型(脳、臓器)、神経系型、リンパ系型、生殖器系型の増加量は年齢によって異なる。

・身体組織の発育曲線・神経系型は器用さやリズム感を担っており、4・5歳までには成人(20歳を100%)の80%に達する。

などが挙げられます。

 

さて、ここで理論に戻りますが

【即座の習得】

【脳の可塑性】

を補填する内容として

 

「= ゴールデンエイジとは =

技術の習得は新たな神経回路の形成ですから、脳・神経系の可塑性(やわらかい性質)が高い方が有利です。従って、その大脳の可塑性が比較的高く、また動作習得のためのレディネスもピークを迎え、双方が絶妙なハーモニーを奏でるゴールデンエイジが重要視されるのです。

それは、動きを頭で理解してから体に伝えるのではなく、見たまま感じたままのイメージに従って体全体で技術を吸収していく特別な時期だからです。そのために、この時期以前(プレ・ゴールデンエイジ)に様々な運動・遊びを通じて、神経回路を開いておくことが条件となります。

(中略)

(2)ゴールデンエイジ(9~12歳頃) ~ 実践的な技術の定義 ~

神経系の発達がほぼ完成に近づき、形成的にもやや安定した時期ですから、動きの巧みさを身につけるのにもっとも適しています。この時期は一生に一度だけ訪れる、あらゆる物事を短時間で覚えることのできる「即座の習得」を備えた時期(ゴールデンエイジ/Golden Age)なのです。また、精神面でも自我の芽生えとともに、競争心が旺盛になってくる時期です。従って、指導者は子供達に、クリエイティブな選手になるために必要な要素=判断を伴う実戦的で正確な技術=、つまりは「サッカーの基本」を身につけさせることを心がけましょう。ゲームを通して「基本」の必要性を理解させ、反復練習によって、サッカー選手として将来大きく成長するための基礎を子供達に作ってあげることが大切です。」

(図、説明ともplayers firstHPより抜粋引用)

 

 

この理論では、発達曲線から読み取れるように、神経系が大部分発達し、かつ可塑性がかなり残っている時期をゴールデンエイジと定義し、それ以前に様々な運動経験をさせ、基本技術をしっかりと習得させるべき時期としています。

 

可塑性(かそせい)とは、神経細胞の構造及び機能が運動による刺激によって変化し、その変化が保持される性質であり、よく使われる神経回路は処理効率が上がり、使われない神経回路の効率を下げる。(Gorkin:1953)といった解釈ができると思われます。説明内にある、可塑性=脳のやわらかさっていうのは理解出来なかったので勉強します。

 

・「この時期は一生に一度だけ訪れる、あらゆる物事を短時間で覚えることのできる「即座の習得」を備えた時期」といった明記がありますが、「即座の習得」を最初に唱えたドイツの教育学者クルト・マイネル博士は自身の著書「スポーツ運動学」のなかで、

前提条件として「即座の習得」は、最適期以前の段階で既に様々な運動を経験し、神経回路を形成している場合にのみ現れる。(Meinel:1960)

と定義しており、ゴールデンエイジ期に運動したら誰もが「即座の習得」といった運動学習の現象が起きるわけではないですよ。

って部分に注意です。

 

お客様の質問で一番この誤解が多いです。

 

ざっくりとした理論の説明をしてきましたが、

最後にまとめとしてゴールデンエイジ理論の危険性について

・「即座の習得」には前提条件がある

・その前提条件も具体的な指標がない

・年齢毎、時期ごとの明確なトレーニング指標が示されていない。

・神経系の量、重量と、運動の質は関係しない

 

危険因子多すぎ!!

って思うかもしれませんが、子どもを被験者とした実験では長期的な縦断的データを用いる必要があるため、現在のトレーニング科学ではこれ以上踏み込めていないのが現状であります。ですが、ゴールデンエイジ理論のように簡単にイメージしやすく長期的な指標として理論の大衆化を目指していく試みは間違いではないと思います。

 

ですが、ネット上の都合のいい謳い文句のような、間違った理論の普及が現在の幼児、児童の体力低下の低年齢化を引き起こしている可能性もあるので気を付けましょう。

 

大人も子どもも一朝一夕に運動能力は向上しない。

と言ったところでしょうか。

 

冒頭で記述した通り、私はゴールデンエイジ理論肯定派です。笑

私は自身の研究の中で、今まで不明確だった即座の習得の前提条件。その前提条件である可能性が高い運動能力を導き出しております。

 

その辺は、またいつか記事にしようと思います。

 

それでは素晴らしい Workout Lifeを!

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